きっかけは
野生動物の鞣し加工について、当初のきっかけは、平成 28 年に埼玉県内の西秩父商工会から草加商工会議所を通じての相談でした。シカによる農作物・森林への害が深刻であり、猟師、ワナによる駆除で、肉が「みそ漬け」などで特産物として販売できるようにはなったものの、シカの皮を何とか利活用できないかとの事でした。根底には、命をいただいているのですから少しでも廃棄する部分を少なくしたい、動物との向き合い方を真剣に考えたいとの双方の想いがありました。
みんなでリレー
従来より各々の顧客に対して、各種革の鞣し、製品の OEM 製造等の皮革の加工を請け負っていましたが、原皮から鞣し、染色加工、製品加工までの全てを草加で請け負うものづくりがスタートしました。この時製造したのは、シカのセーム革のメガネ拭き、革ポーチ、小銭入れなどです。主に秩父の道の駅で販売し、一部は草加市内でも販売していました。秩父のシカ皮はおしなべて解体後の処理、保存状態が良く、革を作る我々も驚くほど良い革を作ることができました。
役に立てるかもしれない
シカの害についてもこの時初めて詳細を知ることになりました。日本全国で猟師の減少や他の原因により個体数も減らず、被害も大きくなっているという事にも気づかされ、この社会問題に草加の技術が役に立てるのではないかと、折々にチーム内で話していました。
あちこちのシカの皮
平成 31 年にはエゾシカの肉を販売している北海道北見市の事業者、岡山の事業者から声がかかり、原皮を預かり、加工して還すという事を草加のチームの事業として行うようになりました。本業の合間にスケジュールを組み込んで行う作業は、納期の面ではシビアな部分もありましたが、シカ革の持つ驚くほど表情豊かで、自然味あふれるタッチはものづくりの楽しさをよび起し、また、産地の注文者様に高く評価していただいたため、大変有意義な事業として捉えています。北見市のポロワッカさんは、独自加工のシカ肉のブランド化に成功し、「レザレクション」というシカ革製品ブランドで道東経済に貢献しています。動物に対しての想いや哲学も持っており、狩猟、処理が高い技術によって行われている様子を実際に見学させていただきました。https://leatherection.com/
鮮度が大事
秩父・北見の例から、絶命後の適切な処理が肉についても、革についても重要であると認識したため、これらを可能な限り啓蒙して命であったものの証としての「革」とその造り手、こだわりに焦点を当てつつ、草加の高品質レザーを広く認知していただき、駆除された動物の皮を有効利用するべく、全国の狩猟者、自治体、農業関係者の方々とその方法を模索していきたいと考えております。
<参考>シカによる被害 被害面積3,380㎢(埼玉県の面積 約3,797㎢)被害額 53億4百万円(令和元年度 農林水産省資料より)