HOMECOMING to Soka city

THE LEATHER SCRAP KIMONO

THE LEATHER SCRAP KIMONO

Photography:Sayuki Inoue ©TANNERS’ COUNCIL OF JAPAN

「THE LEATHER SCRAP KIMONO」は、一般社団法人 日本タンナーズ協会「革きゅん」プロジェクトの一環として作られた作品です。
NYの権威ある広告賞を獲得するなど高い評価を得ました。この作品のメイン素材であるエゾシカ革の着物を是非見たいという声が大変多く、展示場所として選ばれたのはこの着物がうまれた町「草加」でした。
2022年12月15日から草加市文化会館内の伝統産業展示室で展示されています。

ACCESS

「革きゅん」は天然皮革の魅力をさまざまな角度から紹介するウェブサイトです。
革きゅん公式サイト

THE LEATHER SCRAP KIMONO
THE LEATHER SCRAP KIMONO

篠原ともえさんと、クリエイティブチームがデザインを手がけ、2022年2月に披露された「THE LEATHER SCRAP KIMONO」はニューヨークADC賞で2部門の受賞(*)、東京ADC賞も獲得した作品です。
*第101回ニューヨーク ADC 賞「The ADC Annual Awards」は、世界で最も古い広告デザインの国際賞。篠原さんの作品は、企業ブランディングやグラフィックデザインの側面に焦点を当てたブランド・コミュニケーション部門でシルバーキューブ(銀賞)を、ファッションデザイン部門ではブロンズキューブ(銅賞)を受賞しました。

NY ADC賞
東京 ADC賞

DESIGNER

草加市には100年近い皮革加工の歴史があり、その尊い技巧は今もなお、タンナーさん、職人さんたちへ代々受け継がれています。革の加工から商品づくりまで一貫して生産できるこの地だからこそ、今回のような作品をつくり上げることができたと思っております。草加レザーの豊かな伝統と高い技術、そして、美しい天然皮革の魅力を、この作品を通してみなさまにご堪能いただけましたら幸いです。

篠原ともえ

株式会社 STUDEO
デザイナー
篠原ともえ

BACKGROUND

THE LEATHER SCRAP KIMONO

photography : Sayuki Inoue ©TANNERS’ COUNCIL OF JAPAN

THE LEATHER SCRAP KIMONO

photography : Sayuki Inoue ©TANNERS’ COUNCIL OF JAPAN

篠原さんが草加に来て、インスピレーションを受けたのはエゾシカ革が伊藤産業で鞣されている様子。どれ一つとっても同じ形のない動物の革。しかし使用されるのは主に中心部分で縁に近い部分は通常は廃棄されています。きれいなカタチなのにもったいない、これも命だったはず、という想いが素晴らしい作品への原点となったのです。
エゾシカの原皮が日東皮革に送られ加工は始まります。わずかに残る肉と脂肪を除去した後塩蔵され、河合産業で脱毛と皮内部の脱脂を行います。そして伊藤産業で鞣し、染色加工まで行い、レファンズにより革の着物に仕立てられました。まさに草加の職人のリレーによる仕事です。染色加工からは篠原さんが毎週末草加に足を運び、一仕事づつ丁寧に色、形、仕上がりを指示しながら進められました。

MATERIAL

U-TaaaN PROJECT

エゾシカは北海道、道東地域で狩猟されました。肉は熟成鹿肉として、皮は質のよい革製品へ生まれ変わらせることで利活用し、北見地域の振興に奮闘している林徹さんから原皮を購買しました。
https://leatherection.com/

2018年から同社のエゾシカ革の製造を請けているのがLEATHERTOWN SOKA Project team。苦しまないように狩猟したシカの個体の鮮度を保ち、適切な方法で解体したあと、その皮から草加でつくられる革は高品質で、引合いも増えています。その社会的意義と、これまでチームで蓄積した人脈を駆使し、各地で駆除されたシカやエゾシカの皮を預かって鞣し加工をし、あるいは縫製し製品にして産地に還し、シカがもともと生息していた地域の経済的資源とするプロジェクト「U-TaaaN PROJECT」(ユーターンプロジェクト)を始めました。

SPECIALISTS

宮本 宗武

LEATHER TOWN SOKA
Project team 代表
日東皮革株式会社 代表取締役


宮本 宗武

日々皮革を扱っていますが、命あったものであることを忘れることはありません。それを余すこところなく利用していただき、このような素晴らしい作品となったことは、我々タンナー冥利に尽きます。これが草加レザーをもっと皆さんに知っていただくきっかけになれば幸甚です。

伊藤 達雄

そうか革職人会 会長
伊藤産業株式会社 代表取締役


伊藤 達雄 そうか革職人会
http://soka-kawa.com/

東京と近いとは言っても、都内から戻り、草加の緑を見るとやはりほっとします。「ふるさとや 臍(へそ)の緒に泣く 年の暮」は350年前に松尾芭蕉が伊賀に帰郷した際の一句ですが、こちらは今、嫁に行った娘が実家に戻ったような気持ちでいます。たくさんの方に見ていただき、草加の技術の集大成となったこの作品を大切に思ってもらえたら嬉しいですね。

佐藤 勝次

そうか革職人会
株式会社レファンズ 代表取締役


佐藤 勝次

「これは大変だよ」といった私に、「やりましょう! 私が毎回作業に立ち会います」と篠原さんが言ったとき、実は1、2回ほどお見えになるだけかと思っていました。篠原さんは本当に2カ月毎週末来られて、真冬の工場で一緒に作業をしたのが忘れられません。見えない裏の部分までこだわりを持って作られた革の着物は草加だけでなく日本の宝だと誇りを持って言えるでしょう。次の、またその次の世代に伝えて残していきたいと思っています。

河合 一典

埼玉皮革関連事業協同組合 理事長
河合産業株式会社 代表取締役


河合 一典

害獣革の事業を始めたころ、北海道北見市で狩猟を見学させてもらいました。「かわいい」でも「かわいそう」でもなく真剣勝負の動物との対峙。生きていくとはこういう事と実感しました。誰かが仕留めて誰かが肉に、そしてレザーにする。そのことに少しでも想いを巡らせてほしいと思います。

ABOUT SOKA LEATHER

草加市は、埼玉県の南東部に位置している。水と緑に恵まれ、首都に隣接していることから、住みやすくベッドタウンとして人口も増え、現在約25万人の市民が草加市に住んでいる。名物は、よく知られた「草加せんべい」。そして「皮革」「浴衣」。
皮革が草加で作られるようになったのは昭和10年に和太鼓、神輿を製造する「宮本卯之助商店」のタイコ皮部門を草加で創業したことが始まり(現 日東皮革㈱)。
古代湿地帯だった草加地域は良質な地下水が豊富で、皮革の製造にうってつけであった。問屋、皮革製品の会社が多い東京・浅草への地の利もよかった。
タンナーといわれる鞣し(なめし)業者が多数営業していたのが、昭和30~40年代。その後タンナーは減ったが、製品製造の業者が増えてきた。やはり工場を営む上では、便利で地価も都内よりはまだ手頃だった。現在約160社が皮革関連の仕事を続けている。
新しく草加で事業を始める者も多い。
現在、営業している企業はいづれもオンリーワンの技術を持ち、他社が模倣することは容易にはできない。そのため相互に情報交換をするなど、同業者が集まる地域の産業としては珍しくオープンマインドな産地である。地域全体でSOKA LEAHTERの振興と共に、後継者を育てていかなければならないという共通認識で様々なイベント活動や、新規事業にもチャレンジしている。

ABOUT SOKA LEATHER ABOUT SOKA LEATHER

photography : kazuyuki miyabe

ACCESS

草加市文化会館 伝統産業展示室
埼玉県草加市松江1-1-5 1F 伝統産業展示室 開室時間 10:00~17:00
休館日のご案内 毎月第1水曜日、12/29~1/3 ※その他、臨時休館あり